今日の中東紛争の原因を作ったサイクス・ピコ協定、バルフォア書簡を解説(広瀬隆雄さん)

公開日: : 政治, 歴史

サイクス・ピコ協定はこんにちの中東を理解する上でとても重要なのでちょっと話しますね。

 

まず背景としてこれは第一次世界大戦のドサクサの中で生まれたものであることを理解してください。

 

英国=フランス=ロシアがドイツ=オーストリア=オスマン帝国(トルコ)と対峙したわけです。

 

その頃までにオスマン帝国は「ヨーロッパの病人」と言われるまでに衰退していました。

 

領土だけは広大であり、中東、北アフリカまで伸びていました。

 

英国はついにこのオスマン帝国を突き崩すチャンスを得たわけです。

 

オスマン帝国が倒れれば中東に「力の真空」が出来る…アラブ人もユダヤ人も(ひょっとしたら……我々の独立国を建国できるかも…)という希望が生まれた。

 

よく言われる「英国の二枚舌、三枚舌外交」というのは、苦しい世界大戦を戦っている英国が、なんとか中東の人たちを仲間へ引き入れる方便でした。

 

シオニスト運動(ユダヤ人の国家を建設しようとする運動)の活動家、ハイム・ヴァイツマンは(チャンスだ!)と思い、英国の代議士ハーバート・サミュエルに相談します。

 

ハーバート・サミュエルのお父さんは投資銀行サミュエル・モンタギューを創設した人です。

 

ハーバート・サミュエルはエドワード・グレイ外務大臣を訪れ「ユダヤ人の問題をどうにかして欲しい」と依頼します。

 

その際、サミュエルは「ベイルートやダマスカスは非ユダヤ人口が多いのでユダヤの建国の地には向かない。ここはフランスにでも管理してもらえば?」と提案します。

 

このサミュエルの提唱したことは、のちに英国の中東専門家マーク・サイクスとフランスの外交官フランソワ・ピコが秘密協定を結ぶ際のタタキ台になりました。

 

サイクス・ピコ協定では北の青ゾーンを仏が、南東の赤ゾーンを英が、AならびBは仏と英がそれぞれ「保護国」を設立、聖地エルサレムは国際共同管理とすることが密約されました。

 

 

英が仏に「餌をぶら下げた」のは「ガリポリの戦い」などのバトルが繰り広げられている中、英が少しでも仏からの戦争協力を導き出すために行われました。

 

サイクス・ピコ協定に先立ち、英は中東のアラブ人に対し「蜂起すれば建国を助けてやる」という、いわゆるフセイン・マクマホン協定を結びます。

 

これにより『アラビアのロレンス』に描かれたアラブの蜂起がおこったわけです。

 

ここでも英は少しでも戦況を有利にするため、口約束で味方につけたわけです。

 

しかし1917年10月にロシアで革命が起き、レーニンは帝政ロシアが外国と交わした秘密協定の義務に縛られるのがイヤだったので、サイクス・ピコ協定の存在をばらします。

 

そのような混乱の中で英アーサー・バルフォア外相がユダヤ人コミュニティーのリーダー的存在だったライオネル・ロスチャイルドに、ユダヤ人の祖国建設を容認する、いわゆるバルフォア書簡を送ります。

 

これも…ロスチャイルドの資金力を頼む英の苦肉の策。

 

サイクス・ピコ協定のひとつの問題は人種の分布、宗派の問題を無視し、人工的な線引きをした点です。

 

下は人種分布。

 

一例として茶色はクルド人ですがイラクにもシリアにもトルコにもまたがっている。

 

 

もうひとつ英のやった過ちはローレンスと共に蜂起したフセインの息子、ファイサルを「ダマスカスの王に据える」と約束、1年だけその約束を守った後、「ここはフランスの領地だからお前は代わりにイラクの王になれ!」と追い出したこと。

 

ファイサルはそれに従い、イラクの国王になります。

 

でも彼はもともと今日のサウジアラビアのメッカのあたりの出身…イラクには支持基盤は無かった。

 

それでもファイサルうは人徳のある人だったので「統一アラブ国家」の夢を語りスンニ派とシーア派をひとつにまとめようとします。

 

(広瀬隆雄さん)




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