「見知らぬ男が久しぶりと突然声を」熊本29歳女性殺人遺棄事件。現場のお化けビル周辺に現れた黒パーカーの男の正体は(週刊文春)

5月29日午後8時45分ごろ、熊本市中央区南坪井町の雑居ビルで派遣社員・辰島ありささん(29)の遺体が見つかった事件。

 

辰島さんは、全身を毛布で包まれ、その上から紐のようなもので縛られた状態で発見された。死因は窒息死だったことがわかっている。

 

現場となった雑居ビルの防犯カメラには、辰島さんの最後の姿が映っていた。

 

そこには彼女のほかに男の姿がある。

 

共に雑居ビルに入っていった男は、このビルのエレベーターの保守点検を担当していた30代男性だ。

 

ところが、ここから事件は思わぬ展開を見せる。

 

辰島さんの最後の状況を知っているかもしれないこの男性は、事件の2日後に死亡していた。

 

未だ犯人すら不明の“不可解”な事件の起こった現場は、繁華街の盲点のような人気のないスポット。

 

取材を進めると、以前から周辺では女性への不審な“声かけ”事案があったことが分かり――。

 

社会部記者が解説する。

 

「28日午前1時ごろ、アルバイト先の飲食店を退勤した辰島さんは同居する交際相手の男性に『帰る』とメッセージを送った後に連絡が取れなくなっています。

 

翌日、家族が警察に相談し捜索が始まり、同日に8階建ての雑居ビルで発見されました。

 

事件現場となった雑居ビルは、2階までは美容室などの店舗が入っていて、3~6階は住居部分。

 

現在、空きテナントとなっている7階で辰島さんの遺体が見つかっています。

 

2基あるエレベーターのうち“黄色い方”が7・8階に上がれますが、今は使われてないようです。

 

非常階段にも施錠されていて、7階にたどり着けるのは“鍵”を持つビルやエレベーターの関係者しか不可能だと考えられています」

 

警察はこの“関係者”を含め捜査を進めており、30日朝には事件現場のエレベーターの保守点検を担当する30代の男性従業員が出勤していないことが分かり、その後死亡が確認された。

 

発見場所や死因は不明だが、自殺の可能性があるという。

 

捜査関係者によると死亡した男性と辰島さんがビルの中に入っていく様子が防犯カメラに映っていたというが、その後、男性1人だけが出てきたという。

 

近隣住民は28日の午前2時、「女性の叫び声が聞こえた気がする」と話す。

 

「普段から会社の行き帰りにこのビルの前を自転車で通るんですが、事件があったのは土曜日から日曜日に変わった時で、その日は休みだったので近くで深酒をしていました。

 

遅くなってしまったなと急ぎ足で帰宅していると『キャーー』という甲高く叫ぶような声が聞こえてきました。

 

てっきり私と同じように酔っ払った人が奇声をあげているもんだとばかり……。

 

翌日にはビルにブルーシートが被されていて、警察もいたので、昨夜の叫び声と何か関係あるのかなと思っていました」

 

現場周辺で生まれ育ったこの近隣住民は、事件の舞台となったビルの7階に以前入居していたカラオケ店に通ったことがあるという。

 

「私は40代後半なんですが、高校生の時は7階にはカラオケ店がありましたね。

 

その時からこのビルは異様な雰囲気を醸し出していて『オバケが出る』なんて言われていました。

 

実際に歌っていたら画面がザーッと鳴って、切れて真っ暗になることもありましたから。

 

日中の人通りは結構あるんですけど、夜12時を越えるとアーケードの電気が全て消えて街灯のみで薄暗くなる。

 

特にビルのある場所は、ちょうど栄えている区域と区域の狭間のさみしい場所なんです。カラオケ店があった頃は近くに居酒屋も多くて明るかったけど、最近どんどん潰れていってね。特別な理由がなければ、住民以外寄り付きませんよ」

 

現場となったビル前には多くの花や飲み物が供えられ、午後11時を過ぎても通行人が立ち止まり手を合わせる姿が多くみられた。

 

しかし、近隣住民は供えられた“酒”を何者かが盗っていく姿をみたと話し「本当にここら辺は治安が悪くなってしまった」と嘆いた。

 

事件が起きたとされる日に周辺では、黒っぽい服で懐中電灯を持った不審な男女がいたとの目撃情報も出ている。

 

辰島さんが働いていたアルバイト先と同じエリアで働く20代女性のA子さんは5月の中旬に見知らぬ男性に声をかけられたという。

 

「私は居酒屋で働いていて、23時に閉店して締め作業をしているとお店を出るのは0時過ぎになります。

 

実家が近いので歩いて帰るのですが、事件のあったビルから少し進むとローソンがあるんですけど、そこで急に声をかけられました」

 

黒いパーカーを着た男性に「久しぶり」と声をかけられ、知り合いかと思ったA子さんは足を止めたという。

 

「20代後半ぐらいの男性に『会ったことあるよね?』と言われたんですけど、全然記憶になくて。

 

呼ばれた名前も全然違ったので怪しいと思って歩き始めたら、『ねえねえ』と肩を叩かれました。

 

怖くなって母親に電話しながら走ったら、いつの間にかその人は消えていて……。

 

その2週間後くらいに例の事件が起きて、本当に怖くて近寄れなくなりました」(A子さん)

 

その後、A子さんは母親に送り迎えしてもらわなければ職場に通えないほどになった。

 

しかも事件の報道を受け、犯人が捕まっていないこともあり今は休職を余儀なくされている。

 

A子さんが震える声で言う。

 

「あんな場所で声をかけられたのも初めてですし、もしかしたら事件に巻き込まれていた可能性があると考えると外出することができません」

 

いわくつきのビルで起きた謎の事件は、周囲の人々を震え上がらせている。

 

辰島さんと事件のことを知っている可能性のある、死亡した30代男性従業員が勤めていた会社に問い合わせたが、「事件については何も言えません」と答えるのみだった。  

 

辰島さんは派遣社員としてコールセンターで働くかたわら、飲食店でアルバイトまでして働いていた。

 

ネイリストやエステ業に就きたいという自身の“将来”に向け、奮闘している最中に、命を散らしてしまった。

 

警察は死亡した30代男性と事件の関連について捜査を進めている。

 

顔見知りによる犯行なのか、はたまた関連のない女性を巻き込んだ事件なのか。

 

“不可解”な点が残る事件の真相解明が待たれる。

 

(週刊文春)

https://news.yahoo.co.jp/articles/eea5f44a80f08da6cb0ac89dbec013e098936993?page=1




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