チャイニーズドラゴンのボスの大偉(ダーウェイ)は中国で資産家となっていた。(朝日新聞)
非合法ビジネス、日本人取り込む――第7部〈犯罪底流〉
日本で「チャイニーズマフィアのドン(首領)」と呼ばれた男は、 中国・北京の中心部から車で約50分の高級住宅街に住んでいた。
中国残留孤児2世らでつくるドラゴンのメンバーに「大哥(ター・コー)(兄貴)」と慕われ、 裏社会では「大偉(ター・ウェイ)」の名で知られた佐藤威夫さん(43)だ。
昨年1月、20年余を過ごした日本から移ってきた。
東北部の黒竜江省で生まれ、劉威(リウ・ウェイ)と名付けられた。
人民解放軍に入ったが、86年に残留孤児の母と来日した。
中国の小学校では、母が日本人との理由で「小日本鬼子、日本に帰れ」と殴られた。
歴史の授業後はとくにひどかった。
その後日本国籍を得た。
清掃会社などで働き、貿易会社をつくった。
東京・錦糸町を拠点に様々な「商売」を手掛け、在日華人社会で名が知られるようになった。
ドラゴンメンバーらと中古車を解体し、部品やタイヤを中国に輸出する商いを始めた。
顧客の求めに応じて盗品バイクを扱ったのがきっかけで、違法行為にのめり込む。
高級車や貴金属を盗み、パチンコや高速道路のカードを偽造した。
「金になるなら何でもやった。すべて日本の裏社会との共犯だ。中国人だけではできないよ」
90年代に台頭したチャイニーズマフィアのうち、中国東北部出身者のグループを率いた。
福建や北京、上海の他グループからもいさかいの仲裁を頼まれるなど一目置かれた。
頭角を現すにつれ、弟の「小偉(シアオ・ウェイ)」とともに警察の監視が強まった。
一方で、日本にいる中国人留学生を物心両面で支えた。
その数は2千人を超える。
05年に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、1年間服役した。
帰国は逮捕前から考えていた。
「もう日本ではもうからないし、つまらない。刑務所生活は今後の構想を練るための長期休暇」と笑う。
現在は東北地方を中心に、都市再開発や鉄鉱石の採掘と製鉄、株式投資にいそしむ。
軍隊時代の友人や支援した留学生がいまの仕事に役立っている。
「軍や地方政府、銀行支店の上層部に入った彼らから、あらゆる情報が入る。3億円はもうけた」と話す。
日本にいるかつての配下に「金をためて中国に戻れ。一緒に商売しよう」と呼びかける。
「日本で違法行為するより、中国で合法ビジネスをする方がはるかにもうかる。日本なんてばかばかしいよ」。
警備員に守られ、プールとサウナのある豪邸の主は、日本で一緒に暴れた仲間たちとの第二幕を待ち望んでいる。
(朝日新聞)
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